宮城県など介護施設に要請 "感染者 病院に搬送せず対処を"

2021年4月23日 21時58分

新型コロナウイルスの感染拡大で病床がひっ迫しているため、宮城県などは、介護施設に入所する高齢者が感染しても病院に搬送せず、まずは施設で対処するよう施設側に要請していたことが分かりました。

宮城県と仙台市、それに県医師会などは4月7日、仙台市周辺の合わせて14の市町村の「仙台医療圏」にある介護施設、およそ1600か所に対して、5月上旬まで、入所する高齢者が新型コロナウイルスに感染しても病院に搬送せず、まずは施設で対処するよう要請したということです。

これまでは年齢にかぎらず、医師が「中等症」以上と判断した場合に、入院の措置をとっていましたが、要請後は「中等症」以上も施設内での対処が求められるということです。

「仙台医療圏」では、4月13日の入院患者が158人に上り、病床の使用率は70.5%に達していて、22日の時点でも、58.2%とひっ迫が続いています。

要請後、合わせて6か所の施設でクラスターが発生していて、宮城県は、介護施設に災害医療派遣チーム=DMATの医師や看護師を派遣するなどの対応にあたっています。

宮城県新型コロナ総合調整室の赤間正行室長は「一時は医療崩壊が懸念される状況で、医療関係者からの要望もあった。施設任せにはせず、国や仙台市とチームを作って施設に派遣するなどの対応を続けたい」と話しています。

高齢者施設「つらく覚悟のいる通知」

宮城県などからの要請について、医師で、仙台市内を中心に複数の高齢者施設を運営する医療福祉グループ「清山会」の山崎英樹代表は「介護が必要な高齢者や、われわれにとって、つらく覚悟のいる通知だ。だが、医療がひっ迫してしまい、出さざるを得なかったものだとも理解している」と話しています。

山崎代表が運営する施設でも、これまで入所者や職員が感染するケースが複数ありました。

また、クラスターが発生した県内の別の高齢者施設にも、応援の職員を派遣しています。

山崎代表によりますと、施設内では、感染者とそれ以外の人の生活スペースを分けることにしていますが、対策には限界があるほか、スタッフが濃厚接触者となった場合、自宅待機を余儀なくされ人手不足に陥ることもあるといいます。

山崎代表は「感染者は別の場所に分離することが必要だが、そうした専用の施設が不足している。今は、できることをするしかなく、お年寄りと一緒に力を合わせて乗り越えるしかない」と話しています。

「仙台医療圏」病床の使用率 6割前後で推移

宮城県によりますと、「仙台医療圏」では、感染者が急増した3月以降、病院が確保した病床の使用率は6割前後で推移しています。

「仙台医療圏」は、宮城県内35市町村のうち、仙台市と、その周辺の塩釜市、名取市、多賀城市、岩沼市、富谷市、亘理町、山元町、松島町、七ヶ浜町、利府町、大和町、大郷町、大衡村の14の市町村で、これまでに県内で発表された感染者の8割余りが集中しています。

このため「仙台医療圏」の医療機関では、空きの病床が少なくなっていて、確保している病床の使用率は4月13日には70.5%に達しました。

その後も、大きくは下がらず6割程度で推移し、22日の時点でも58.2%にのぼっています。

50%以上の数字は、政府の分科会が示している4つのステージで最も深刻な「ステージ4」にあたります。

また、重症者用の病床の使用率も、5割前後の日が続いていて、22日の時点では54.8%でした。

要請以降 6つの施設でクラスター

宮城県などが「仙台医療圏」の市町村にある介護施設に要請した4月7日以降、対象の地域では6つの高齢者施設で感染者の集団=クラスターが発生しています。

県と仙台市によりますと、4月7日以降、仙台医療圏の高齢者施設で発生したクラスターは、仙台市で3か所、名取市で2か所、賀城市で1か所でした。

22日までの感染者数は、

▽4月9日に確認された仙台市の施設で47人
▽4月10日に確認された仙台市の施設で15人
▽4月11日に確認された多賀城市の施設で17人など、

6か所で、合わせておよそ100人に上っています。

「仙台医療圏」以外の自治体でも高齢者施設でのクラスターが相次ぎ、
▽22日に確認された美里町の施設では40人
▽4月14日に確認された大崎市の施設では13人の感染が確認されています。

宮城県 新型コロナ調整室の赤間正行室長は、県などの介護施設への要請とクラスターの関連について「施設ごとに状況は異なるので一概に要因とするのは難しい。施設だけで感染を拡大させたかどうかは、わからない」と話しています。