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ナラティブRBA奨励賞

2018.11.30

2018年11月ナラティブRBA賞受賞 グループホームはるかの杜 渡邊 麻衣子 さん

「まさじ」「まさあにゃ」「ともえ」「まさあね」「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」これを聞き、誰のことかわかることまで2年ちょっと。
「まさじ」  →息子さん
「まさあにゃ」→男性スタッフ
「ともえ」  →奥さん
「まさあね」 →女性スタッフ
「お兄ちゃん」→男性スタッフ
「お姉ちゃん」→女性スタッフ

呼び名が変わる大切さ。
以前ナラティブでお伝えしたFさんとの序章からの物語をお伝えしようと思います。

Fさんが入居されてから、Fさんを知ろうとスタッフ皆で話し合ったり、Fさんとの会話の中で知っていくことができました。
また、家族さんからは「冗談好き」と聞いていたので、冗談を言い合える仲にもなっています。

今年の4月からスタッフの慎君が担当になったFさん。
今までは不信感や不安からの場所から、「ここにいてもいい」と思ってもらえてきたFさんにとって、慎君の担当替えはうってつけのことだったと感じました。

「Fさ~ん」と慎君。ここからFさんとの二人しかはいれない会話が始まります。お話し好きなFさんが慎君に圧倒されています。
優しいFさん、食事が終わってウトウトしたいのに一生懸命話してくれる慎君の話を「うん、うん」と聞いています。
以前、慎君との話のあと、Fさんが「いや~、圧倒されちゃた。」と話してくれたことがあります。慎君とFさんはまるで家族。
年齢が離れすぎてるので、お爺さんと孫のようです。ここで、冒頭の呼び名です。

「まさじ」「まさあにゃ」の違いです。スタッフがわかるまでFさんが怒ってしまったり、不安を増長させてしまっていました。
「お姉ちゃん!まさじは?」
「仕事にいってますよ」
「そうか。お姉ちゃん!まさあにゃは?」「仕事ですよ。」
「そんなわけないだろ‼さっきまで話してたんだぞ!」
「え?」
というやり取りが何度もありました。
ある時、女性スタッフがFさんに、
「Fさん。まさあにゃって、もしかして慎まさあにゃのことですか?」
「そうだ。」
我々はご本人の言う言葉の深いところにある意味を理解せずに答えていたことがわかりました。
慎君が夜勤の日中は「お姉ちゃん!まさあにゃは?」
「夕方に来ますよ。」
「そう。お姉ちゃん!まさじは?」
「仕事にいってますよ。」
「そうか。」と。

さみしがりやのFさんは、時折女性スタッフのことを「まさあね」と呼ばれます。けれど、男性スタッフの件で学んでいるので、すぐに誰のことかわかります。

Fさんや我々にとっては呼び名はただの呼び名。呼び名の深いところにある感情、心情があるということを毎日学んでいます。

Fさんは受診時に私の手帳というものを頂き、ノートの最初にいろいろな質問の項目があります。その中で「好きな色は?」という項目をFさんに聞いたとき、「空色だな~」と聞きました。
Fさんは、ご自宅ではこたつのみで過ごされていたため、上着(ジャンパー)をいつも着ていた。とご家族からの話がありました。
Fさんの好きな空色の上着を購入し、慎君と他の方達と行く楽天イーグルスの観戦をしてもらいたい!!と思い、何軒かまわり、Fさんに似合う空色のパーカーを購入し、楽天観戦へ。

昔野球をされていたFさん、「ピッチャーとショートをしていた。」と嬉しそうに話されます。
慎君はあまり楽天の選手は詳しくないため、一緒に行ったスタッフなどと目が悪いFさんに伝えます。
Fさんは目をキラキラさせて観戦していた。と聞きました。
ミミズクフェスタのフォトコンにも選んでます。それくらい素敵な表情のFさんでした。
今度はFさん、慎君の得意な博物館、美術館を巡るイベントがあります。更に目をキラキラさせることでしょう。

Fさんと過ごし、Fさんの言葉の奥にあるものが何か、どうしたいのか、どうして欲しいのかを学ばせて頂いています。Fさんだけではありません。他の入居者さんの言葉や行動にも反映させています。

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