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ナラティブRBA奨励賞

2018.11.30

2018年11月ナラティブRBA賞受賞 介護老人保健施設さくらの杜 加茂 千明 さん

Kさんは角田市で生まれ、結婚を機に船岡に移り住み、2男2女の子供たちを育てながら毎日畑仕事に精を出していました。
旦那さんと死別し、子供さんたちも皆自立して家から出た後、自宅で転倒を繰り返すようになり、
病院を受診したり、さくらの杜通所に通うなどされ、入所の半年前からはレビー小体型認知症による幻視もあり一人暮らしもままならず、今年の4月にさくらの杜に入所されました。

入所当初はホールでTVを見たり「暇だから何でもするよー。」と洗濯物や新聞紙畳みをお願いするスタッフにも笑顔で快く仕事も引き受けてくださいました。
他利用者さんの名前も覚えてお話したり、明るく楽しく過ごしているようでしたが、夜になると「子供の声が聞こえる」「男の人が居る」と言ったり、
時には「何でこんな所に来てしまったんだかね。家に帰して~」と頭を抱えて30分以上も家がどんなに良かったかを話した日もありましたし、
巡視の度にベッドに座って「眠れないんだ。」と夜勤スタッフとお話する日が続きました。
息子さんが週に1度面会に来た時には「帰りたい」と言って息子さんと口ゲンカになる事も数えきれず。

あんなに元気に笑っていたKさんも、生活リズムが崩れ、家に帰れない事の不満など次第にご飯以外の時間を部屋で寝て過ごす事が増えていきました。

これではダメだ。
今まで生業にしていた畑仕事はやらないかな?足を悪くして畑は難しい。ベランダにプランターはどう?1度は「今はいい」と言っていたKさんですが、
トマトの苗と土を沢山入れたプランターを前に「ほら、早く持ってきて。こう植えるんだよ」とどんどん植え、水やりまでしっかり終わらせます。
「たまに肥料と水やって。毎日は要らないから」とその後の事もテキパキ指示を出してくれる姿は流石!の一言。
しかし、その後に数回水やりもやりましたが「やっておいて。」と、後が続きません。

そんな時、息子さんが持ってきたお花を居室に飾っていると、毎朝水やりをしている事が判明。
朝起きてカーテンを開け、コップに水を汲んでくる。傷んだ花も小まめにチェックする毎日。こっちが何か、何かしないとと考えなくても、本当にやりたい事はやるし続けている。
お花が全て枯れた今では、お花を育てて毎日の水やりは続いています。

他にも料理を作るのが上手で行事での活躍や、最近では息子さんが沢山持ってきてくれた柿を包丁であっという間に剥いてベランダいっぱいに干し柿を吊るしています。
デイの柿剥きにも「K先生お願いします!」とお呼びがかかるほど。
スタッフが柿を見ていると「あれ家の柿なの。毎年作ってるんだから」と話してくれました。

後から「外まで水やりは大変。ジョウロも重いし」と教えてくれました。
相変わらずお部屋で寝て過ごす事は多いですが、朝の水やりを始めた事で施設での生活にもリズムが生まれたのか夜間帯も眠られるようになり、
行事や外食、買い物と外へ行く事も増えてきています。

今、何がしたいのだろう。何が必要なんだろう。と私たちが考えているだけで、押し付けになっていないだろうか。
今までの生活が施設の生活になる訳ではないが、もっと利用者さんの細かな言動や行動にも気をつけ気を配る必要があるのだと再認識させられました。

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