清山会グループからのご案内

ナラティブRBA奨励賞

2021.12.31

2021年  ナラティブRBA賞受賞 グループホームはるかの杜 木村 優 さん

「だいじょぶだあ~!」
「ベリグ!ベリグ!(very good!very good!)」
令和4年8月21日、〇尾さんと同じくらいジャイアンツを愛するFさんが旅立たれました。
はるかの杜は開所7年。
7年の間に14名の入居者さんがはるかの杜から旅立たれました。
何気ない日々を過ごす中で、皆さんの言葉をふと思い出す機会があります。
Fさんは、野球が大好きな方でした。
そして、お酒も大好きな方でした。
前管理者の渡邊麻衣子さんがいた時は、楽天戦を球場で観戦される程、野球が大好きな方でした。
(渡邊麻衣子さんの事も大好きだったみたいです)
野球中継を観るのが日課で、オフシーズンもスタッフが録画したジャイアンツ戦を観て楽しまれておりました。
野球を観ながらビールを美味そうに飲まれる姿が今でも思い出されます。
亡くなる前日も居室のテレビはもちろん、ジャイアンツ戦がかかっておりました。
テレビを観る事、会話をすることは、困難な状況でしたが野球中継をかけながら、大きな声で話しかけていた看護師の阿部さん 、お二人の姿を見ているとなんだか会話してるような感じがしました。
その日のジャイアンツは、惨敗でしたが、、、「だいじょぶだあ~次は勝つから~」そんな風におっしゃっていたのではないかなぁと思います。
いつ、どんな時も入居者さんだけではなく私達スタッフの事も勇気づけてくれました。
不安な気持ちがある入居者さんには「だいじょぶだから~気にすんなぁ~」。
バタバタしている、焦っているスタッフには「だいじょぶだから慌てんなぁ~、アバウトでいいんだあ~」。
Fさんの「だいじょぶだあ~」を聞いてると、大丈夫じゃないのに、なんだか大丈夫な気がしていました。
「だいじょぶだあ~ベリグ!ベリグ!」の一言で、場の空気が和み、明るい雰囲気に変わっておりました。
人として、一人の男性として、私は個人的に大好きな方でした。
そんなFさんの体調が徐々に不安定になり、歩行する事も困難になっていきました。
整形外科や内科の病院受診を繰り返し、はるかに戻ってくるも状態は悪くなるばかり、、、
「だいじょうぶだから~」と言いながらも時折つらい表情をされ、何をどうしたら良いか?悩みながら数日間、関わっておりましたが状態が急変、救急搬送、入院となりました。
診断は脳出血、担当医より手術をしてもメリットが低いこと、リスクがある事の説明を受け、状態が回復されないまま退院され、再びはるかの杜での生活が始まりました。
しかし、これまでのFさんとはまったく違い、会話することも自ら身体を動かすことも困難な状態でした。
嚥下状態も悪く次第に口からの摂取も難しくなりました。
点滴をしながらベッド上での生活が続いていたある日、定年前に仕事をされていた部下の方が3年ぶりに面会に来てくださいました。
「常に、全体をみていた。厳しい人だったけど、情深い人だった」そのような事を話されておりました。
お会いした瞬間、Fさんの表情も変わり、何か言いたかった、伝えたかったのではないか?そのように感じました。
部下に慕われる上司。
改めて、Fさんの人となりを知るとともに、様々な事を考えさせられました。
はるかの杜でも、いつも入居者さん、スタッフ、ユニット全体をみまもり、様々な変化に最初に気づくのはいつもFさんでした。
夜勤中、遅い時間にパソコンをしている時も、、、「身体に毒だから早く休めよ~」などと声をかけてくださった事もありました。
私も含めFさんの一言に救われ、がんばる事ができたスタッフは少なくありません。
様々な事に気づき、気を配り、毎日ぐったりだったのではないか?と思います。
年中無休で、はるかの杜の入居者さん、スタッフをみまもり続けていたように思います。
はるかに入居してからは、それがFさんの仕事だったように思えます。
体調が悪くなってからも、、、大丈夫じゃないのに「だいじょぶだあ~」とご自身の事は、ニの次でした。
いつもは優しい看護師の阿部さんも、思わず、、、「こう言う時は、我慢しないでください!」。
今となっては、そのやりとりも思い出すと、グッと込み上げてくるものがあります。
ご自身の事はいつもニの次だったFさんが、お元気だった頃、入浴担当だった男性スタッフにこんな事を話してくださいました。
「実はさ~、女の人だと裸になるの恥ずかしいんだよな~」。
女性スタッフが、入浴のお誘いをするとあまり乗り気ではなかった事が多く、、、正直、私達は「お風呂はあまり好きじゃないのかなあ」その風にしか考えられておりませんでした。
本音を話してくださった嬉しさもありましたが、これまで気づけなかった事に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
まだまだ、言いたくても言えなかった、我慢をさせてしまっていた事があったと思います。
話すことが困難になってからも、、、あの時、あの場面で言いたかったこと、伝えたかったことがあったのではないか?そう考えてしまいます。
Fさんの好きな事、性格、生き様を大切にしながら日々、関わっておりましたが、、、、彼の本当の想いに気づく事ができていたのか?と問われると、、、言葉がつまります。
そんな時、ご家族から頂く言葉は、私達の心を癒し、後悔や反省をプラスに変え、また一歩前へと進む言動力になります。
つい先日、娘さんがはるかの杜に来所されました。
その際、お礼にとワインをユニットスタッフ一人一人にプレゼントしてくださいました。
ワインと一緒にメッセージカードも添えてあり、以下のような事が書かれておりました。
父が生前大変お世話になりました。
「仕方ない」とたくさんのことをあきらめて、はるかの杜に入所した父が、最後ははるかの杜を自分の家と思い幸せな時間を過ごし、安らかに旅立てのは皆さんのおかげだと感謝しております。

ふとした時に父のことを思い出して、クスッと笑って頂けたら嬉しく思います。

お礼のお気持ちとして、父がお気に入りだった故郷のワインを贈ります。

本当にこれまでありがとうございました。

メッセージカードを読み、こみ上げてくるものがありました。

Fさん、娘さんからたくさんの事を学ばせて頂きました。
これまで本当にありがとうございました。

辛い時、不安な時、Fさんの「だいじょぶだあ」を思い出し、これからも頑張っていこうと思います。
ワインは、辛い時に「だいじょぶだあ」って自分に言い聞かせ少しづつ飲みたいと思います。
あっという間になくなったりして、、、。

ページの先頭に戻る